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2017年8月16日 (水)

Potionno1FleurdeLune熱と自己嫌悪

目を開けると、見たことがない部屋だった。
慌てて起きようとしたけど、頭が痛い。


記憶の断片だけが、残ってる。
ティーカップ。階段。フレデリックの髪の毛。
首元の小さなクロス十字架。窓の月明かり。
目が覚めたか。そのまま寝てろ。様子を見て馬車で家に帰るから。
何も考えないで、とにかく休め。

部屋のドアが開くと、
執事にァーノンがトレイに何かを持って入ってきた。
これは、お飲みいただかないと。薬ですから。

一瞬ドアの柱に黒い扇子がひらひらしてるのだけ、見える。
ああ。彼女のところで、お茶を飲んで。。。

ジョン。とにかく、今はこれを飲め。これは間違いなく薬だ。
詳しいことは家に着いてから話す。

薬?嫌だ。何も飲みたくない!

問答無用で抱えられて無理やり口元に押し込まれた。苦い。僕は甘い方が好きなんだ。
結局、すぐに疲れには勝てずそのまま眠り込んでしまった。

フレデッリックの家に着いた頃にはもうかなり遅い時間だった。
肩を貸してもらいながら部屋のベッドに横になったけど、
今度は自己嫌悪で眠れなかった。

サロンで騒ぎになったに違いない。
フレデリックにも迷惑かけた。
マダムも間違いなく怒ってるだろな。
ログザンナの屋根裏には出入り禁止になるかもしれない。
たまらなく自分が情けなかった。

また今夜も月明かりだ。今何時だかもわからない。
一応、食事でお腹は満たされてるし、熱もだいぶよくなったけど。

ため息が出た。


寝ろよ。また明日から忙しいぞ。
うん。。。わかってる。


フレデリックが椅子に座ったまま動かない。
お前、余計なこと考える必要はないからな。
図星だった。頭の中では、
僕はどうしてこう、上手く立ち回れないのか
やることなすこと裏目に出るのか
物を知らなすぎる自分と、思うように進まない全てに
そして自分に嫌気がさしていた。

俺だって色とヘマはやらかしてきた。
お前と会う前にな。お前が知らないだけだ。

ごめん。フレデリック、僕は君に迷惑、、

マダムに聞いてみろ。いくらでも話は出てくるぞ。
お前の飲んだ媚薬だって、まあ、一度失敗はしてる。
だから対処できるんだ。こうやってな。
。。。深くは聞くな。
全部見透かされてるのかよ。
僕がいう言葉を遮ってフレデリックが言った。

ジョン。腐ってる時間なんか、ないぞ。
お前はお前のままでいいんだ。
いつもカッコよくて、なんでもソツなくこなすフレデリック。
普段はクールな顔してるくせに。
そんな顔に見慣れてしまうと、
いつかのボーイズトークや、飲んだくれてアホなことをした時の
素のフレデリックの姿をつい忘れてしまう。
奴の過去は知らないけど、今度もっと聞いてみよう。
いつも、口ごもって言わないけどさ。

フレデリック、もっと僕には本当のこと話せよ。
僕は何を聞いてもちっとも変に思わないし、もっと君のことを、、
。。。


寝息が聞こえてくる。

なんだ。フレデリック、寝ちまったよ。
この続きはまた、僕が完全に回復したら話そう。
明日はダンスじゃなくて、世界経済とか地理とか、ああ。
シガールームで何が本当に行われてるのかをもう一度聞いてもいいな。

でも。
奴は一体、どんな人生を送ってきたんだろう。
僕とは違う世界に生きてたのは解った。
もっと信用してくれないかな。
僕は、サロンにいる連中とは違うんだ。
それだけは、僕にとっての真実だから。
奴が口ごもる過去を、今日ほど知りたいと思ったことはなかった。


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